『神と共に 第一章:罪と罰』あらすじと感想【ろう者の母親に抱き続けたジャホンの罪悪感】】
『神と共に 第一章:罪と罰』のあらすじと感想を書きました。
参考にしていただけると幸いです。
あらすじの前に、本編を視聴する際に着目して欲しいポイントを書きます。
それは、ジャホンが死ぬまでに抱えていた罪悪感です。
彼は、ろう者の母親に罪悪感を抱いて家を出ました。
15年間、一度も実家に戻ることなく命を落とします。
今記事のあらすじは、ネタバレ度30%ほどです。
その罪悪感の正体は書いていません(三幕構成でいうところの設定だけです)。
【なぜ、ジャホンは消防士の仕事を選んだのか?】
【なぜ、彼は亡者となってから、ろう者の母親に会いたがうようになったのか?】
このような推測をしながら本編を視聴してもらいたいです。
特に、天倫地獄のラストシーン(ジャホンが閻魔大王に『どんな罰でも受けますから生き返って母親に謝りたい』と涙ながらに訴える)で泣いてしまいました。
同時に、閻魔大王がジャホンの犯した罪ではなく、彼の15年に渡る贖罪を評価して審判を下したことに感動しました。
以降、あらすじです。
『神と共に 第一章:罪と罰』あらすじ
ジャホン死す
消防士のキム・ジャホン(チャ・テヒョン)が、火災現場の高層ビルから落下した。
地面に叩きつけられる。
しばし、無言であった。安堵の声が漏れる。
抱きかかえていた少女が両親の元へ走っていく。彼女に名前を聞いた。
キム・ジャホン。
狼狽えた。なぜ、名前を知っているのか。
少女が救急車に搬送されていく。
キム・ジャホン。
彼の名前が幾重にも鈍色の空に、こだました。ジャホンの目が右、左、上と動く。
正面から、20代と思しき一組の男女が笑いかけてきた。
ジャホンは、現場から立ち去るよう警告を発する。歩を進めて、顔が強張った。
傍らに、怪我人が横たわっていて、同僚の消防士たちがジャホン先輩と呼びかけている。
男(チュ・ジフン)がビルを見上げて、呆れた。
女(キム・ヒャンギ)が、ジャホンに微笑みかける。
予定通り無事、死亡されました。
ジャホンは、女の声に呆然としている。
女は自己紹介を始めた。
彼女たちは、冥界の3使者だった。49日間、7回の裁判で弁護と警護を担当するという。
男は、警護担当のヘウォンメク。女は、補助弁護士ドクチュンだ。
3番目の使者は食事中だと、ヘウォンメクが補足した。
ジャホンは口を半開きにしている。蘇生を施されている自分を見下ろしていた。
一人の消防士が両膝をついて天を仰ぐ。
異次元の空間が、ジャホンをまとった。
母に会ってから逝きたい。彼の願いも虚しく、冥界に取り込まれていった。
3使者のリーダー・カンニム
ジャホンは、初軍門(チョグンムン)で、ヘウォンメクの横を歩いていた。
閻魔大王の巨大石像が彼らを見下ろしている。
カンニム使者(ハ・ジョンウ)を紹介された。
彼は、3使者のリーダーとのことだ。千年で、47人を蘇らせたという。
冥界の入口に向かう。ドクチュンと合流した。
殺人地獄 ジャホンの罪
ジャホンと、3使者は、火湯霊道(ファタンヨンド)の橋に進んだ。
橋は、岩盤の上にかかっている。岩盤の亀裂から、マグマが噴出していた。
いきなり殺人地獄か? ヘウォンメクが、目を剥いた。
彼は、誰を殺したのかとジャホンに詰め寄った。
ジャホンが、誰も殺めていないと半泣きになる。
裏切り、暴力、天倫、殺人、怠惰、うそ、不義……。
ドクチュンが、下界にある7つの罪を指折り数えていく。
ジャホンが、泣きっ面を強めた。
カンニムが、言葉や行動の影響で死なせても間接的な罪になると呟く。
ドクチュンが瞑想にふけった。
ヘウォンメクが彼女に、誰を殺した? と尋ねる。
ドクチュンの目蓋が開いた。
ジャホンは彼女の視線に射貫かれた。
脳裏に、燃え盛ったビルが浮かび上がる。彼は、不安げな面持ちで外から、それを見上げていた。
聞き耳を立てて、ビルの入口へ進んだ。
爆発音が轟いた。
同僚に引き戻される。ガラス窓が飛び散った。
ビルが、一棟ごと炎に包まれる。
ジャホンは、必死の形相で叫んだ。駆け寄ろうとしたが、またもや押しとどめられる。
殺人地獄 最初の裁判
正気に戻った。石柱の上に移動している。
数百メートル下でマグマが泳ぎ回っていた。
数百体の亡者が、よじ登ってきては落下していく。
変成(へんじょう)大王が、ジャホンを見下ろしていた。
大王(チョン・へギュン)から向かって右斜め前に座る判官が、書記官さながらに口を開く。
ジャホンは【未必の故意による間接殺人罪】で起訴され、【火あぶりの刑と5年】を求刑された。
彼は、ぼんやりと地面を見つめている。
カンニムは、変成大王に最終弁論を促された。ジャホンに、同僚の最後の言葉を聞く。
ジャホンは、先輩に被さる外壁を持ち上げようとした。
だが、怪我人を助けろと命じられている。
カンニムは、真っ直ぐにジャホンを見て、救助した人数を尋ねた。
記憶がはっきりしないと口ごもるジャホン。
カンニムが、浄玻璃の鏡の用意を促した。
ドクチュンが巨大香炉に駆け寄る。彼女は、背丈ほどの線香の火に短棒を押し当てた。
煙が立ち上っていく。ビル火災現場で救出活動に勤しむキムが投影された。
危険な火災現場で、ジャホンは、8人を助けました。
カンニムが鏡を見つめながら言った。
変成(へんじょう)大王が真剣な顔つきで耳を傾けている。
カンニムは、大王と判官に向き合った。
面識もない8人の命と、親しかった同僚の命。
それらの重みに違いがあるのか問う。そして、最終判決を下すよう進言した。
ジャホンが、浄玻璃の鏡を見上げて、ジヨン……と呟いた。
鏡に映る同僚の消防士は涙を流している。
彼は妻と幼い娘らしき親子の写真を眺めていた。天井が崩落していく。
変成大王が、最終判決を下した。
ヘウォンメクとドクチュンがハイタッチを交わした。カンニムが深々と頭を下げる。
ジャホンの表情が和らいでいる。潤んだ目で、変成大王を見上げていた。
怠惰地獄 3使者がジャホンを助ける理由
ジャホンと、3使者が、木造船で三途の川を渡っていた。闇が広がっている。
カンニムによれば、次は無駄な人生を送ってこなかったかの審判が待っているらしい。
ジャホンは、転生を望まないと吐き捨てた。
それは冥界が判断することだ。カンニムが戒める。
ドクチュンが、千年前に交わした閻魔大王との約束があると言った。
3使者が、千年で49人を蘇らせることができたなら、彼女たちも人間に転生できるようだ。
48人目の貴人になってください。ドクチュンが両手を組んで祈るような仕草をした。
ジャホンは、自分が貴人でなかったら、どうするのだと憂う。
カンニムが、それも冥界の判断だと返した。
そして、ジャホンに、裁判長に対しては黙秘を貫くよう頼んだ。
怠惰地獄 二つ目の裁判
ジャホンが、船の上で、裁判長・初江大王(キム・ヘスク)と対峙している。
彼の右隣にヘウォンメクとドクチュン、左隣にカンニムが立っていた。
川面が太陽光に煌めいているような明るさが広がっている。
ドクチュンが、ジャホンの消防士としての功績を伝えた。
猫の救助に失敗した過去である。
人助けをしたかったのか? それとも与えられた人生を真心を持って生きたかったのか?
初江大王が尋ねる。
ジャホンは、お金のためだと答えた。
大王の顔が侮蔑で満ちていく。
ヘウォンメクは溜息をついた。カンニムとドクチュンが、目を見開いてジャホンを見遣る。
初江大王は、金儲け主義と非難した。
ジャホンは、地獄へ流されかける。
カンニムが慌てて、浄玻璃の鏡を見るよう進言した。
鏡に、生前のジャホンが映し出される。
初江大王は真剣な顔つきで、それを眺めた。
彼女は判決を下し、金儲け主義と早とちりしたことを詫びた。
怨霊の正体
微かな月明りの中、ジャホンと、3使者が鬱蒼と茂った剣樹林(コムスリム)を歩いている。
ドクチュンが、行き先を言った。
生前についた嘘を審判する、うそ地獄。
カンニムは、ジャホンが黙秘の約束を破ったことに怒った。
ヘウォンメクが、現夢(ヒョンモン)で母親と会えばいいと助言を与える。
転生可能な亡者は、一度だけ会いたい人に会えるという。
ジャホンの顔に活力が満ち溢れていった。
彼と3使者は、小船で移動することにした。剣樹林を貫く船路を、一直線に下っていく。
咆哮のような唸り声がする。
ドクチュンが不安げな顔つきで、頭上を仰いだ。
船路を覆う枝に、地獄鬼(チオックィ)が立っている。
屈強な体格を有した猿のようだ。顔はドレッドヘアのようなもので隠れている。
飛び掛かってきた。カンニムが切りつける。
彼は、地獄鬼の正体が怨霊でジャホンの肉親の誰かだと言った。
ジャホンは、考え込んだ。力なく首を横に振る。
小船の進行速度が急激に大きくなった。
左側に、垂直に切り立った斜面が現れる。右手は、断崖を見下ろせた。
地獄鬼が四足歩行で追ってきた。その数は増える一方である。
ヘウォンメクが、大剣で岩を叩き割る。
背後で、崩落が起きた。
カンニムが汗ばんだ顔で座り込んだ。
ヘウォンメクが、肉親で亡くなった者はいないかジャホンに問う。
その怨霊のせいで冥界が荒らされているという。
ジャホンが目を泳がせて、母さんと呟いた。
一行は、船から剣樹林に降りた。ジャホンが目隠しをされる。
ヘウォンメクが彼に近寄って言った。
地獄鬼が現れた理由が怨霊のせいであれば、一行は49日以内に裁判を終わらせることが不可能になる。
カンニムは、ドクチュンにジャホンの弁護を頼んだ。
そして、下界に降り立つ。
カンニム、下界に降り立つ
カンニムが病院に現れた。事務室のファイルを漁る。
ジャホンの遺品受取人が、弟のスホン(キム・ドンウク)であることを突き止めた。
スホンは母親(イェ・スジョン)と共に、ジャホンの遺品を受け取っている。
カンニムはスーツをまとい、ジャホンの自宅へ向かう。
母親が応対した。
カンニムは、手話でジャホンに命を助けてもらったと話す。
母親の目に涙が溢れていった。カンニムが最後の挨拶をしたいと頭を下げる。
母親は退室した。
カンニムが振り返る。泣き顔から怒りの表情に変わっていた。
目を赤く光らせた影と対峙している。
どこで死んだ? 剣先を向けた。
影が、窓から逃げる。カンニムは追いかけた。
民家の路地を飛びぬける。見失った。
カンニムは、顔に悔しさを滲ませる。
閻魔大王、現る
剣樹林に閻魔大王(イ・ジョンジェ)が姿を見せた。
ヘウォンメクとドクチュンが恭しく頭を下げる。
ジャホンは、しげしげと閻魔大王を眺めた。閻魔の外見は人間そのものである。
目元だけ見れば、ジャホンと変わらない30代という印象だ。
だが、伸び放題の無精ひげと胸元までの長髪のせいで老けている。
ヘウォンメクが、ジャホンの頭を押さえつけた。
閻魔大王が、冥界を怨霊に荒らされていることに不快感を露わにする。
ヘウォンメクは、カンニムが下界で捜査中ですと述べた。
そして怨霊は見つけ次第、燃やしますと続ける。
母さんに手を出すな。
ジャホンが声を荒げた、彼は閻魔大王の胸倉を掴んだ。
ヘウォンメクが彼を引きはがす。
閻魔大王は、呆れ顔で夜空を仰いだ後、怨霊の消滅を急かした。
果たして、カンニムが取り逃がした怨霊とは誰だったのか?
怨霊を捕まえて、閻魔大王の怒りを鎮めることができるのか?
続きが気になった方は、本編でどうぞ。
『神と共に 第一章:罪と罰』感想【ラストシーンに感動した理由】
記事の冒頭でも書きましたが、ラストシーン(天倫地獄)に感動しました。
ジャホンが閻魔大王に「母親に謝りたい」と涙ながらに頭を下げたシーンです。
閻魔大王は、ジャホンの犯した罪より、消防士としてのジャホンに着目しています。
罪を憎んで人を憎まずといったところでしょうか。
ジャホンを弁護したカンニムの台詞が思い浮かびました。
「人間たちは、喪失感の大きさと同じくらい成長した」
喪失感とは、亡くなった人を失ったという寂寥感です。
ジャホンが閻魔大王に言った台詞(どんな罰も受けるから、もう一度母親に会いたい)は、カンニムが接した人間たちの象徴に感じました。
カンニムと、閻魔大王のジャホンに対する印象は同じに違いありません。
そして、私自身、亡き母親を思い出しました。
誇れる息子だっただろうかと胸が苦しくなります。
だから、もう一度生き返って母親に謝罪したいと願うジャホンに心を揺さぶられました。