『リメンバー・ミー』あらすじ【ミゲルが繋いだヘクターの願いとココの想い】
『リメンバー・ミー(2017)』のあらすじになります。三幕構成(設定、対立、解決)のうち、設定を、まとめました。
参考にしていただけると幸いです。
あらすじの前に、着目してもらいたい3つのポイントを記します。
- ミゲルが、助けたい死者は誰なのか?
- 死者が会いたがっている生者は、なぜ、死者との記憶を失いつつあるのか?
- 果たして、この死者は、年に一回の『死者の日』に生者に会いに行くことができるのか。
メキシコでは、死者が生者の国に渡ることが可能な『死者の日』という風習があります。死者が生者の国に帰るには条件がありました。
それは、生者が、死者の写真を、祭壇に飾ることです。
『リメンバー・ミー』の死者は、自分を覚えてくれる生者がいないと、生者の国へ渡れません。それどころか、存在が消失します。
そんな一人の死者を助けるべく、少年・ミゲルが、奮闘します。
『リメンバー・ミー』あらすじ
リヴェラ家は、音楽禁止
メキシコのサンタ・セシリア。
リヴェラ靴店兼自宅で、少年・ミゲルがココに歩み寄る。
ココは、椅子に腰かけて目を閉じていた。100に手が届くほどの年齢である。
彼女の手を取り、呼びかけた。ココの口元に柔和な笑みが浮かぶ。
彼女は、ミゲルの名前を間違えた。ミゲルの眉が八の字になる。ココは目を閉じて、俯いた。
ミゲルは、マリアッチ広場に向かった。太陽光が真上から降り注いでいる。
エルネスト・デラクルス像を見上げた。ミゲルの目は、輝いていた。
デラクルスは、マリアッチ広場で歌手活動を始め、メキシコのスターダムに駆け上がった。
『リメンバー・ミー』を歌唱中に、巨大洋鐘が落下、1942年に命を落としている。
ミゲルは、広場に隣接するサンタ・セシリア墓地に足を踏み入れた。
奥には、家屋と見紛うデラクルスの墓がある。遺品が納められていた。
窓越しに、ギターを確認できる。羨望の視線を注いだ。
マリアッチ広場に戻り、靴磨きの仕事に入った。
客の音楽家に、『死者の日音楽コンテスト』の出場を勧められる。ミゲルは、「家族に叱られる」と泣き顔になった。
客は、ギターを差し出した。デラクルスの言葉(チャンスを掴め)で、ミゲルを鼓舞する。
ミゲルは、笑顔でギターを受け取った。
祖母のエレナが怒鳴り込んできた。
マリアッチ(楽団)野郎と客をののしる。客は、ギターを抱えて逃げ出した。
ミゲルは、自宅のリヴェラ靴店に連れ戻された。
なぜ、リヴェラ家は、音楽が禁止なのか
ミゲルが、『死者の日音楽コンテスト』に参加したいと訴える。
エレナは、祭壇部屋に、彼を連れていった。オフレンダ(祭壇)には、先祖の遺影が並んでいる。
「死者の日は年に一度、ご先祖が帰ってくる日。この世に帰って来られるよう写真を飾る……」
ミゲルは、エレナの言葉を待たずに、背を向ける。後ろから腕を引っ張られた。
「家族のそばにいるんだよ。あんなふうには……」
エレナが、祭壇の写真立てに、手を差し向けた。
三人家族(少女と両親)の写真である。目が大きく端正な顔立ちの女性、彼女の膝にのる少女、顔だけ破り取られた人物が写っていた。
少女は、ミゲルの曾祖母ココである。ココを膝にのせているのは、彼女の母・イメルダだ。
ミゲルは、怪訝そうに、顔だけ破れた人物に目を止める。
「ココの父さん?」
ミゲルは、声を絞り出した。ココの父親は、音楽の夢を追いかけて失踪している。
それ以来、リヴェラ家では、音楽が禁止された。
エレナが「忘れるべき男だ」と血相を変える。
不意に、ココが「父さん? 帰ってきたの?」と口を開いた。
エレナは、柔和な顔つきで、やんわりと否定した。ココに、あんた誰? と返され悲し気な顔つきになる。
ミゲルは、そっと祭壇部屋を抜け出した。
ミゲル、ギターを破壊される
ミゲルは、屋根裏部屋に向かった。
モニターやビデオデッキが、置いてある。『デラクルス・ベスト集』を再生した。
エルネスト・デラクルスの出演映画の後に、インタビュー映像が流れた。
あなたは、どうやってチャンスを掴んだのか?
姿の見えないインタビュアーが、デラクルスに、聞いた。
ミゲルは、食い入るようにモニターを見つめている。モニターに、薄く彼の顔が反射していた。目が生き生きとしている。
デラクルスは、夢は掴むものだと、握りこぶしを作った。
ミゲルは、床のチラシを手に取った。
『死者の日音楽コンテスト』のチラシであった。チャンスを掴む……と呟く。
日が沈みかかった。死者の日が始まった。
ミゲルは、自作のギターを抱えて、自宅を抜け出した。
野良犬のダンテが追いかけてくる。祖母の背中を目にし、祭壇部屋に隠れた。
祭壇の前で、ココが椅子に腰かけている。
祭壇の下にギターとダンテを押し込む。エレナや両親が入ってきた。エレナたちは、ミゲルを靴職人として、工房に迎えると笑った。
ミゲルは、困り顔で、エレナを見遣る。
エレナたちは、ご先祖様も誇らしかろうと笑い声を立てて外へ出た。
ダンテが、祭壇の供え物に、がっついた。
ミゲルが、ダンテを引っ張る。写真立てが、落下し、ガラスの破片が飛び散った。
ミゲルは、写真を拾った。写真は、左端が折り曲げられていた。
ゆっくりと写真を広げる。ミゲルは、息をのんだ。ココの父は、ギターを持っていた。
デラクルスのギターと同じ外観であった。
背後から、ココが、父さん……と手を伸ばす。
ミゲルは、彼女に写真を見せた。
父さんって、エルネスト・デラクルスのことかと尋ねる。
ココは、写真を指差し、父さんを連呼する。
ミゲルは、屋根裏から、一階の屋根に移った。声を張り上げる。
「ひいひいおじいちゃんは、デラクルスだ。僕は音楽家になる」
通りから、エレナや両親が困惑した顔で見上げる。
エレナは、屋根裏から、レコードやギターを引っ張り出した。ミゲルの前に放り投げ、怒りを露わにする。
ミゲルは、ココの父はデラクルスだと反発した。
エレナは、家族を捨てた男の音楽は呪いだと吐き捨てた。ミゲルのギターを手に取った。祭壇に飾られない、その男みたいになるよと言った。
祭壇なんか、くだらないとミゲルjは言い放った。
エレナは、目を見開いて肩をくすめた。すぐさま、怒りの表情でギターを地面に叩きつける。
エレナは、泣き笑いの表情で両手を差し出した。
ミゲルは、涙を手の甲で拭い、駆け出した。
日は落ち、街灯が点っている。マリアッチ広場では、死者の日音楽コンテストが始まっていた。
ミゲル、生きたまま、死者の国へ
ミゲルは、受付の女性に、参加したいと声をかけた。楽器がないと断られる。
出場者に、ギターを貸してもらうよう声をかけていくが、あしらわれた。
悲壮な顔つきで、デラクルスの銅像を見上げた。
銅像のギターと、古写真のギターを見比べる。ミゲルの目つきが鋭くなった。
広場に隣接の、サンタ・セシリア墓地に移動した。
デラクルスの、邸宅と見紛う墓に向かう。窓枠に足をかけた。街灯の光は届かず、ミゲルに気づくものはいない。
打ち上げ花火の爆発音と同時に、窓に体当たりした。
内鍵が外れ、滑り込んだ。灰色の空間に、鈍色の月明りが差し込んでいる。
床に、マリーゴールドの葉が散らばっていた。
石棺に飛び乗り、肖像画を見上げる。
あなたの孫の孫です。
謝罪の言葉を続けて、ギターを手にした。
床のマリーゴールドが、明滅する。
石棺から降り立ち、ギターを抱えた。視線を、デラクルスの肖像画に固定したまま、後ずさりする。
「あなたなら、チャンスを掴めと言うはず。広場で歌わせて……」
ミゲルは、ギターをかき鳴らした。足元のマリーゴールドが、舞い上がる。突風で煽りたてられたかのように。
「ギターがないぞ! 窓が割れている」
外から声が響いた。懐中電灯の明かりが、窓から飛んでくる。ミゲルは、しゃがみ込んだ。
扉が開き、老人が入ってきた。
ミゲルは、両手をあげ立ち上がった。老人が、彼の身体を通過していく。
「誰も、いない」
老人は、怪訝そうに、デラクルスのギターを拾った。
ミゲルは、薄いオレンジ色の光をまとっている。驚きの表情で、デラクルスの墓を抜け出した。
広場の人間は、ミゲルに気づかない。
両親が、ミゲルと叫んでいた。駆け寄り、抱きついた。だが、両親の身体を、すり抜けてしまう。
オレンジ色の光をまとった死者が、ミゲルに気づいた。
ミゲルは、驚き叫んだ。
不意に、ミゲル! と骸骨の女性に抱きつかれた。
ミゲルは、祭壇の写真に移った、ふくよかな女性を重ねた。
ロシータおばさん?
骸骨のロシータは、満足げに頷いた。骸骨のパパ・フリオやヴィクトリアもいる。
ヴィクトリアは、死んでいるように見えないと言い、ロシータが、生きているようにもと続けた。
フリオが、イメルダに聞こうと提案する。
突然、双子の骸骨が駆け寄ってきた。イメルダが、生者の国への橋を渡れないという。
ヴィクトリアは、ミゲルのせいではと顔を曇らせた。
フリオが、ミゲルの手を掴んで駆け出す。
サンタ・セシリア墓地に、橋がかかっていた。
橋は、マリーゴールドの葉で包まれている。死者が、こちらに向かっていた。
フリオたちは、橋に足を踏み入れた。ミゲルとダンテも、後に続く。
音楽禁止の掟は嫌だ
「死者の国は、本当だったんだ」
ミゲルは、マリーゴールドの橋を進み、感嘆の声を漏らした。前方に、死者の住まう住宅が広がっている。
死者の国への道は、マリーゴールドの橋だけだ。
すれ違う骸骨たちが、ミゲルに驚く。ミゲルは、パーカーのフードを被った。
死者の国の入口に差し掛かった。再入国と案内板がある。
隣のレーンは、生者の国への出国レーンである。夫婦らしき骸骨が、カメラを向けられていた。
骸骨の出入国審査官が「息子さんの祭壇に写真が。日の出までに、お戻りを」と笑いかける。
次の死者は、生者の国で一枚も写真を飾られていないことが判明した。
彼は、マリーゴールドの橋へ駆け出した。
しかし、連れ戻されてしまう。
ミゲルは、再入国のゲートをくぐった。イメルダを発見する。橋を渡れないと、審査官に苦情を言っていた。
ミゲルが古写真を、こわごわとポケットから取り出す。
イメルダは、祭壇の写真を取ったの? とミゲルに詰め寄った。審査官に、ミゲルを送り返してと声を荒らげる。
審査官は「呪いは、家族の許しで解ける。日の出前に」と返した。
不意に、フリオが、大変だと叫んだ。ミゲルの人差し指が、白骨化している。
イメルダは、審査官から、マリーゴールドの葉を渡された。彼女は、ミゲルの名前を呼びかけた。
「許しを与える。私の写真を祭壇へ戻すこと。ただし、音楽禁止」
マリーゴールドが金色に輝いた。ミゲルは、しぶしぶ、それを受け取った。マリーゴールドの葉が大量発生し、彼の身体を包む。
生者の国にワープした。デラクルスの墓であった。壁のギターを持ってマリアッチ広場に駆け出した。
死者の国に、戻ってしまう。「もう、約束を破った」
イメルダは、彼に詰め寄った。ミゲルが、なぜ、音楽を嫌うのか問いかける。
あの男の道は歩かせないとイメルダ。
ミゲルは、顔が破り取られた男の写真を見つめた。
家族なのにと呟く。トイレへ行ってくると言って、部屋を出た。
ある死者の切実な願い
デラクルスに会わなければ……。
独りごちると、骸骨の警備員に呼び止められた。逃げ出し、薄暗いスペースに逃げ込む。
見覚えのある死者が、取り調べを受けていた。
出国ゲートの強行突破に失敗した死者である。彼は、警察官に懇願した。
「デラクルスとは古い仲だ……彼と会わせるから橋を渡らせてくれ」
聞き耳を立てていたミゲルの顔色が変わった。
死者は、警告書を受け取って解放された。
ミゲルが、追いかけて声を張り上げる。
「生者の国へ戻るには、デラクルスの許しが必要だ」
死者は、ヘクターと名乗り、ミゲルに交換条件を持ちかけた。
「死者の日に、生者の国へ帰るには、写真を飾ってもらう必要がある」
ヘクターは、ミゲルに、自分の顔写真を渡した。
果たして、ミゲルは、デラクルスに会うことができるのか。
デラクルスは、ココの父親なのか。
続きは、本編でどうぞ。