『婚約者の友(2016)』のあらすじと感想【アドリアンの嘘】
婚約者の友人 あらすじ
婚約者の友人 予告/シネマトゥデイ
婚約者の友人を視聴しました。あらすじと感想を書いたので、気になりましたら、本編でどうぞ。
アドリアンとの出会い
1919年、ドイツのクヴェードリンブルク。
アンナ(パウラ・ベーア)は、20ペニヒの花を買って、墓地に向かった。
墓の前にしゃがみ込んで、怪訝そうな顔つきになる。バラの花が供えられていた。近くで、男性がレーキで地表面をならしている。
フランツ・ホフマイスターの墓に花を手向けたのは、誰なのか尋ねる。男性は、フランスの硬貨を見せて、外国人だったと答える。
アンナは、ホフマイスター診療所に向かった。フランツの母・マグダ(マリエ・グルーバー)に、誰が墓にバラを置いたのか、心当たりを聞いた。
マグダは、戦争前のフランス人の友人ではないかと答える。
アンナは、再び、墓地に出向いた。木陰に隠れる。男が、フランツの墓を見下ろして泣いていた。
アドリアン、ホフマイスター診療所を訪ねる
男が、墓地を出て、ホフマイスター診療所に立ち寄る。
所長のハンス(エルンスト・ストッツナー)が、彼の素性を尋ねた。
男は、アドリアン(ピエール・ニネ))と名乗った。彼がフランス人と分かると、ハンスは帰ってくれと色めき立った。
フランツの遺影を手に取り「フランスの男は、私の息子を殺した犯人だ」と言い放つ。
アドリアンは、伏し目がちに立ち上がった。僕も兵士でした、人殺しですと言い残して診療所を出ていく。
アドリアン、フランツとの思い出を語る
アンナが、診療所から出ていくアドリアンとすれ違った。
彼女は、ハンスに「彼を墓地で見た。2日続けて、フランツの墓参りに」と声をかける。
ハンスは、険しい顔つきで部屋を出て行った。
アンナは、ホテルのフロントに足を運んだ。アドリアンは外出中だった。彼への手紙を託す。
アドリアンが、ホフマイスター診療所に姿を見せた。
アンナは、フランツの両親(マグダ、ハンス)と共に、彼を出迎える。
アンナは、フランツの婚約者と自己紹介。そして、フランツと、知り合ったきっかけや最後の様子を尋ねた。
アドリアンは、フランツとルーヴル美術館でマネの絵を鑑賞したことなど、思い出を語って帰って行った。
アンナ、フランツとの思い出を語る
後日、アンナはアドリアンと共に、墓地へ。
フランツの墓に、花を供える。アンナは、墓にはフランツの骨がないと言った。
フランツは、身元不明の兵士として、フランスで埋葬されていた。命日しか分からず、亡くなった気がしないと寂し気な表情をするアンナ。
アドリアンは驚いた後、彼女を慰めた。
アンナは、フランツとフランス語で内緒話をするほどにフランスが好きだったと笑う。
アドリアンは、宙を仰いで「葉の音」と呟く。アンナは、だから春が好きなのと笑った。
二人は、墓地を出た。
日差しが降り注ぐ草原を抜け、岩石の丘に立つ。
アンナが、ここでフランツから求婚されたと言った。
そして、フランツと行くはずだった新婚旅行の行き先を挙げていく。
エッフェル塔、ルーヴル美術館、パリの大通り。
アドリアンが、暑い、泳ぎたいと唐突に立ち上がる。
アンナは、湖で泳ぐ彼を、ほとりから眺めた。
湖から上がってきたアドリアンの体に、傷跡を発見する。アンナは、その傷は戦争で? 辛かったでしょうと労わるように声をかける。
アンドリアンは「唯一の傷は、フランツだ」と表情を曇らせた。
後日、診療所で、フランツの両親、アンナ、アドリアンで夜食を共にした。
アドリアンは、戦争前は、パリ管弦楽団のヴァイオリン奏者だったと語る。
マグダが、フランツも生前、ヴァイオリンを弾いていたと微笑んだ。
ハンスが、アドリアンをフランツの部屋に案内した。そして、フランツに祖国のためだと言って入隊を勧めたのは自分だと厳しい表情になる。
ハンスは、フランツのヴァイオリンを「息子の心そのものだ」とアドリアンに手渡した。
しかし、アドリアンは、恐縮し断った。
フランツから両親への手紙
マグダが、フランツから貰った手紙をアンナに渡す。アンナは、それを読み上げた。
戦場が死体の山だったこと。また、ドイツ人とフランス人が互いの言語を学んで殺し合うことの嘆きがあった。
アドリアンが、思いつめた表情で立ち上がる。
ハンスが、再び、フランツのヴァイオリンを持ち出した。
アンドリアンは、それを顎と肩に挟んで奏でた。
アンナもピアノ伴奏。
ハンスとマグダが肩を寄せ合い、ゆっくりと目を閉じる。
不意に、演奏が止まった。アドリアンは倒れてしまった。
彼は、アンナと連れ立って、ホテルに戻っていく。
アドリアンは、ホテル前で、アンナを翌日の舞踏会に誘った。笑顔で頷くアンナ。
部屋に戻ったアドリアンは、手のひらに納まるほどの棺桶を取り出す。
アンナ、アドリアンと舞踏会を楽しむ
舞踏会に足を踏み入れる、アドリアンとアンナ。
テーブル席の兵士が、フランス野郎めと吐き捨てた。
アドリアンが、場違いだったようだと困惑する。
2人は、音楽に合わせてワルツを踊った。アドリアンが、2人組の女性たちに、一緒に踊らないか? と声をかけられる。
アンナは笑みを浮かべて、彼らを眺めた。
「誰に口説かれた? まさかフランス人が」
クロイツが、歩み寄ってきた。アドリアンに鋭い視線を向けている。
アンナは、戦争は終わったのよと言って、アドリアンの元へ走っていった。
舞踏会が終わり、アドリアンは、アンナを自宅まで送り届けた。
帰り道に、酔っ払いの男性に出くわす。
介抱するアドリアン。
酔っ払いが、彼の顔をまじまじと見つめる。
「触るな!」
突き飛ばされた。酔っ払いは唾を吐き捨てて、立ち去った。
アドリアンは、帰宅し、アンナへの手紙を書く。
しかし、【話しておかないと】と書き出したところで、ペンが止まる。
彼は、手紙を投げ捨てた。
アドリアンが、外出先からホテルに戻った。
併設のレストランから、ハンスが出てくる。食事に誘われた。彼が去ると、クロイツに声をかけられる。
互いに名前を名乗った。
フランツの婚約者と踊りに? とクロイツが挑戦的な口調で言った。
アドリアンは、フランス語で愚か者めと言い捨てて階段を上る。
アドリアンの告白
アドリアンが夕食に来ない。
アンナは、ホテルを訪ねた。アドリアンは、不在。
フロントの男によると、アドリアンは翌日の汽車に乗る予定だが、チェックアウトは済ませていないという。
墓地に足を運んだ。
アドリアンが墓石に腰かけている。
アンナが、黙って夕食をすっぱかすなんて……と責める。
アドリアンは「フランツとの、お芝居はお終いだ! 独仏の友情物語だ」と声を荒らげた。
彼は、1918年9月15日の出来事を語り始める。
1918年9月15日の出来事
1918年9月15日、マルヌ県のドルマン。
アドリアンが、10名ほどの仲間と共に、野営地から偵察に出かけた。砲弾が飛んできた。
数人の兵士が死んだ。
アドリアンは、身をすくめながら塹壕の中へ。敵兵と鉢合わせした。
アドリアンは、フランツの腹部めがけて銃を撃った。フランツの上着に手紙を見つける。アンナ宛ての手紙だった。
動揺するアンナ
僕が殺した。
そう言いながら振り返るアドリアン。アンナは、噓でしょう? と涙を流した。
「なぜ、来たの?」
「許しを請いに」
「ルーヴル美術館もマネの絵も、全部、嘘だったのね」
アンナが立ち上がった。追いかけるアドリアン。彼は「明日の正午、汽車に乗る。出発前に両親に話す」と言った。
アンナは視線を合わせず、墓地を出て行った。
ドイツを去るアドリアン
翌朝、アドリアンは、精算とチェックアウトを済ませた。
横を見ると、レストランにアンナがいた。
彼女は、アドリアンの秘密を両親に伝えたという。
2人は、駅に向かった。汽車に乗る直前、アドリアンは、アンナの手を取ろうとした。
アンナは、手を後ろに隠した。
汽車が動き出した。アドリアンがアンナを見つめる。
アンナは、無表情のまま背中を向けた。
アンナ、入水自殺を図る
アンナは、自宅に戻り、フランツからの手紙を読み返した。
手紙には、【僕に何があっても、幸せな人生を送ってほしい】とあった。
フランツに求婚された岩石の丘に立った。湖に入水する。
男が彼女に気づいた。アンナは引き上げられた。
「死は戦争だけで十分だ。ホフマイスター先生の?」と男。
アンナは「誰にも言わないで」と唇を震わせた。帰宅した彼女は体調を崩し寝込んでしまう。
アンナは夢を見た。
ベッドで、ヴェルレーヌの詩選集を読んでいると、階下からヴァイオリンの音色が聞こえた。
一階に下りた。何者かがヴァイオリンを弾いている。
彼は振り返った。フランツだ。頭から血を流している。
ハンスが、アンナに感謝
アンナは、目を覚ました。ハンスがカーテンを開けて傍らに座る。
「フランツを亡くして生き永らえたのは君のおかげだ」ハンスが、アンナに感謝する。「今度は我々の番だ。生きるんだ」
パリから手紙が届いた。
アドリアンからだ。フランツの両親への手紙も同封されている。
<何とか生きている。僕の罪は消えないが、訪れた理由は分かるだろう。許せないと思うがせめて返信だけでも>
アンナは、手紙を薪ストーブに投げ入れた。
フランツの両親の前で、彼ら宛ての手紙を代読した。
<帰国後は母の看病をしました。母は回復し、フランツの家族と貴重な時間を過ごせたと伝えました。パリ管弦楽団に復帰できて嬉しいです。時間ができたら、また、フランツのヴァイオリンを弾きに伺います。アドリアン>
アンナは、教会に足を運んだ。
懺悔室で、嘘をつくのが苦しいと告白する。
「神も理解してくださる。嘘は罪だが、亡き婚約者に関わるもの。純粋な嘘は赦される。フランスの兵士が、許しを請うためにドイツまで足を運んだ。アドリアンを許しなさい」
神父の言葉に、涙を流すアンナ。
アドリアンへの手紙が、宛先不明で返送される
<アドリアンは任務を果たしただけの戦争の犠牲者だ。あなたの嘘を受け入れられた>
アンナは、アドリアンへの手紙を書いた。だが、宛先不明で、フランスから返送されてしまう。
彼女は、汽車でフランスのパリに向かった。アルカヌ通りのホテルへ。
フランツが戦前に宿泊していたホテルだ。
翌日、手紙の住所に足を運んだ。
中年女性に、アドリアンの消息を聞く。だが、引っ越し先は分からないという。
オペラ座のパリ管弦楽団を訪ねた。
演奏者の名前まで把握していないと言われる。
ルーヴル美術館で、マネの絵を探した。
絵画の前に立ったアンナの顔が、かげる。
男性が、ベッドでうつ伏せに倒れている絵のタイトルは、自殺であった。
夜になり、オペラ座へ。
演奏者の顔を望遠鏡で確認していく。アドリアンの姿はなかった。
アドリアンの墓?
病院の事務室で、患者の住所録を調べる。A・リヴォワールの名前を発見。
横に、パッシー墓地と書いてある。
アンナは目を泳がせて、嗚咽の声を漏らした。
パッシー墓地の墓に、A・リヴォワールの名前を見つける。
アンナの表情が和らいだ。
A・リヴォワールのAは、アドリアンではなくアナトールであった。
アナトールの妻を訪ねて、アドリアンの消息を尋ねる。
果たして、アンナは、アドリアンと会うことはできたのか。
続きが気になった方は、本編でどうぞ。
婚約者の友人 感想/カラーに切り替わったシーンが良かった
2時間弱の上映時間は、ほぼモノクロでした。
そして、7つのシーン、計8分間ほどのカラー映像があります。
カラー化した意味は、亡きフランツとの思い出が輝いているのだと解釈しました。
気づいた範囲ですが、以下の7シーンがカラー化しています。
- アドリアンが、フランツとの思い出を(ルーヴル美術館や酒場)を回想したシーン。1分強。
- アンナが、アドリアンにフランツとの思い出を語るシーン。3分弱。
- アドリアンが、ヴァイオリンを弾くフランツを指導するシーン。30秒ほど。
- アドリアンが、フランツのヴァイオリンを弾き、アンナがピアノ伴奏をしたシーン。1分ほど。
- アンナが夢で見た、フランツがヴァイオリンを弾くシーン。40秒ほど。
- アンナが、パリから届いたアドリアンの手紙を朗読するシーン。30秒ほど。
- ラストシーンの30秒。マネの絵を眺めながらアンナが言った台詞「生きる希望が湧くの」
マネの絵のタイトルは、自殺。暗くなりがちなテーマです。
それでも、マネの絵を見ながらアンナは「生きる希望が湧いた」と言いました。
そのラストシーンは、フランツの死を受け入れたことの証左だと感じました。
だから、モノクロ画面は、フランツを失った悲しみの現れですね。
そして、カラー化された2つ目のシーン(フランツに求婚された思い出話)は、フランツと過ごした時期が輝いていたと理解できます。